黒色表皮腫は、項部、腋窩、鼠径、肘窩などの間擦部を中心に、色素沈着とビロード状の肥厚が左右対称性に生じる疾患で、しばしば掻痒を伴う。糖尿病、甲状腺機能異常などの内分泌疾患を伴う良性型、胃癌などの悪性腫瘍に伴う悪性型、肥満による仮性型の 3型に大別されるが、病変の分布から片側型と末端型に分類する報告もある。病理組織像は、角質および表皮の肥厚、乳頭腫症を特徴とする。
膠原病(全身性強皮症、皮膚筋炎)では、手指の特徴的な腫脹、硬化、ゴットロン丘疹のほか、爪上皮延長や爪上皮出血点が見られることが多く、抗核抗体も陽性になる。扁平苔癬は掻痒のある紫紅色、多角形の扁平隆起性病変で、Wickham線条が見られる。通常1cmほどであるが、融合して大きな病変になることもある。尋常性疣贅は、ヒト乳頭腫ウイルスによる、表面がカリフラワー状に角化した丘疹、結節であり、いずれも本症例の特徴とは異なる。
黒色表皮腫のうち、悪性腫瘍を伴うものを悪性黒色表皮腫という。この場合の悪性腫瘍は消化器癌、特に胃癌が圧倒的に多く、60~90%を占めるといわれており、組織型は腺癌が多い。ほかに、肺癌、肝癌、膀胱癌などでも本疾患の併発が見られる。黒色表皮腫の 30~80%は悪性型だが、胃癌患者に黒色表皮腫が見られる割合はせいぜい数%である。悪性腫瘍と黒色表皮腫のどちらが先に生じるかは、症例ごとに異なり一定していない。
原因としては、腫瘍由来のトランスフォーミング増殖因子(transforming growth factor:TGF)αが上皮成長因子(epidermal growth factor:EGF)受容体を介して表皮細胞に増殖シグナルを伝達するという説が有力である。
2011年10月2日日曜日
2011年9月25日日曜日
リウマチ性多発筋痛症(PMR)
リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)
頸部、肩、四肢近位部分などの筋肉に激しく執拗な痛みや、こわばりを来す疾患である。65歳以上の高齢者に多く、在宅医療の現場ではしばしば遭遇する。原因は不明だが、動脈炎が基礎になっているといわれている。
PMRは赤沈で診断できる
PMRでは、赤血球沈降速度(ESR)が40mm/時以上に促進する。血清のCRP値や末梢血液の白血球数も軽度に増多するが、赤沈の促進が最も特異的な所見である。
この症例も、血液検査にて、血沈が1時間値68mmと亢進しており、さらに低栄養状態(アルブミン3.4g/dL)であったことからPMRと診断した。なお、PMRは、リウマトイド因子が陰性で自己抗体が証明されないことが多く、この点が関節リウマチとは異なる。
PMRの治療は容易で、少量のステロイド剤によって改善する。本症例でも、プレドニン10mg/日の投与したところ、わずか数日で疼痛が改善し、同時に食事量も増えた。座位が可能となったので、プレドニン5mg/日と減量し維持量とした。
要介護高齢者の在宅医療の現場では、本疾患が老衰と見なされて、適切な加療がないまま廃用症候群を助長させている例が少なくない。安易に老衰と判断するのは避けるとともに、患者に負担のない検査で原因を突き止めるべきであろう。
頸部、肩、四肢近位部分などの筋肉に激しく執拗な痛みや、こわばりを来す疾患である。65歳以上の高齢者に多く、在宅医療の現場ではしばしば遭遇する。原因は不明だが、動脈炎が基礎になっているといわれている。
PMRは赤沈で診断できる
PMRでは、赤血球沈降速度(ESR)が40mm/時以上に促進する。血清のCRP値や末梢血液の白血球数も軽度に増多するが、赤沈の促進が最も特異的な所見である。
この症例も、血液検査にて、血沈が1時間値68mmと亢進しており、さらに低栄養状態(アルブミン3.4g/dL)であったことからPMRと診断した。なお、PMRは、リウマトイド因子が陰性で自己抗体が証明されないことが多く、この点が関節リウマチとは異なる。
PMRの治療は容易で、少量のステロイド剤によって改善する。本症例でも、プレドニン10mg/日の投与したところ、わずか数日で疼痛が改善し、同時に食事量も増えた。座位が可能となったので、プレドニン5mg/日と減量し維持量とした。
要介護高齢者の在宅医療の現場では、本疾患が老衰と見なされて、適切な加療がないまま廃用症候群を助長させている例が少なくない。安易に老衰と判断するのは避けるとともに、患者に負担のない検査で原因を突き止めるべきであろう。
2011年8月14日日曜日
インスリン分泌指数(insulinogenic index)
インスリン分泌指数(insulinogenic index)
これも見慣れない検査項目だと思いますが、実はこのインスリン分泌指数という検査は、経口ブドウ糖負荷試験でブドウ糖負荷前の空腹時血糖と空腹時インスリン、そしてそれぞれの負荷後30分の結果から計算され、これによってインスリン分泌能力を知ることができます。
この数値が小さいほど、インスリン分泌力が弱いと考えられます。
健康な人の場合のインスリン分泌指数は0.8以上、Ⅱ型糖尿病の人の場合はインスリン分泌が遅れるため0.4未満となることが多く、経口ブドウ糖負荷試験で境界型と判定された糖尿病予備軍の人が0.4未満の場合は糖尿病に移行する可能性が高いと言われています。
このように、空腹時血糖、空腹時インスリンを検査することによって、糖尿病の原因であるインスリン分泌不足、インスリン作用不足、インスリン抵抗性などの病態について把握することができるのです。
これも見慣れない検査項目だと思いますが、実はこのインスリン分泌指数という検査は、経口ブドウ糖負荷試験でブドウ糖負荷前の空腹時血糖と空腹時インスリン、そしてそれぞれの負荷後30分の結果から計算され、これによってインスリン分泌能力を知ることができます。
この数値が小さいほど、インスリン分泌力が弱いと考えられます。
健康な人の場合のインスリン分泌指数は0.8以上、Ⅱ型糖尿病の人の場合はインスリン分泌が遅れるため0.4未満となることが多く、経口ブドウ糖負荷試験で境界型と判定された糖尿病予備軍の人が0.4未満の場合は糖尿病に移行する可能性が高いと言われています。
このように、空腹時血糖、空腹時インスリンを検査することによって、糖尿病の原因であるインスリン分泌不足、インスリン作用不足、インスリン抵抗性などの病態について把握することができるのです。
2011年2月27日日曜日
伝染性紅斑;
伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)による発疹症で、幼児や学童に好発する「リンゴ病」として有名だが、最近成人の発症例が増えていることは重要である。特に、小児との接触の機会が多い20歳代後半から30歳代の女性に多く、医療従事者での発症も報告されている。
ヒトパルボウイルスB19による感染症は通常、感染の約1週間後に感冒に似た症状が現れ、さらにその1週間後に皮疹が出始める。経気道感染がほとんどで、ウイルスは感染初期の約2週間にだけ、主に血液と唾液に排泄され、皮疹の出る時期には排泄されない。
成人では、小児に比べて全身症状が強い。発熱、全身倦怠感、関節痛、手足の腫れ(写真2)が60~90%で起こり、表在リンパ節腫脹が約30%に生じる。小児では両ほおの平手打ち様の紅斑と四肢の網目状紅斑が一般的であるが、成人では網目状紅斑のほかにも風疹様紅斑や紫斑が見られることがあり、ほおの紅斑(写真3)が認められるケースは10~40%と逆に少ない。その上、口腔粘膜、結膜の異常所見や肝脾腫がない例が多く、診断しづらい。
診断のポイントは血液検査である。本症例では、赤血球数や白血球数、血液像、腎・肝機能の異常はみられず、尿検査の各検査値も正常だったものの、血清補体価(CH50)が低下(10U/mL)していた。抗核抗体は陰性だった。ELISA法による検査を施行したところ、正常値が0.08未満の抗ヒトパルボウイルスB19-IgM抗体とIgG抗体が、それぞれ10.9と24.9に上昇していた。これより、本症例はヒトパルボウイルスB19の初感染と考えられ、伝染性紅斑と診断できた。
鑑別診断は主に臨床症状から行う。麻疹は、高熱のほか、鼻カタル、結膜炎、咽喉頭炎、顔面浮腫、口腔粘膜のコプリック斑を伴う。紅斑は半米粒大から小豆大で、融合傾向を示し、病変は耳後や顔面に初発して、体幹から四肢へと拡大する。風疹の紅斑の場合は、拡大の様式が麻疹と似ているが、個別の皮疹は粟粒大で融合しない。EBウイルスの初感染で起こる伝染性単核球症も同じく症状が多彩で、リンパ節腫脹、白血球とリンパ球の増多、異型リンパ球の出現のほか、口蓋の点状出血やアンギナ、肝脾腫を生じる。皮疹も麻疹様、風疹様、多形滲出性紅斑様などと種々の所見をみせる点が特徴となる。
一方、全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病については、手指の腫脹や関節痛の症状が伝染性紅斑と共通しているため鑑別が難しい。よって、これらの疾患を否定するには、抗核抗体などの自己抗体が陰性である点やレイノー症状がない点を確認するとよい。
伝染性紅斑の治療としては、基本的には1週間ほどの安静を勧めればよい。関節痛が強い場合に限り、対症療法として非ステロイド性抗炎症薬を処方する。本症例の場合、初診の約5日後には症状が消失していた。
ただし、妊婦への感染は、胎児水腫の原因になり得るため注意しなければならない。ウイルスには赤芽球系で増殖する性質があり、胎児の赤芽球系で増えると胎児に貧血が起こるためである。
自己免疫性溶血性貧血などの溶血性疾患の患者でも、急速な貧血の進行により骨髄無形成発症が起こり得るので気を付けたい。
ヒトパルボウイルスB19による感染症は通常、感染の約1週間後に感冒に似た症状が現れ、さらにその1週間後に皮疹が出始める。経気道感染がほとんどで、ウイルスは感染初期の約2週間にだけ、主に血液と唾液に排泄され、皮疹の出る時期には排泄されない。
成人では、小児に比べて全身症状が強い。発熱、全身倦怠感、関節痛、手足の腫れ(写真2)が60~90%で起こり、表在リンパ節腫脹が約30%に生じる。小児では両ほおの平手打ち様の紅斑と四肢の網目状紅斑が一般的であるが、成人では網目状紅斑のほかにも風疹様紅斑や紫斑が見られることがあり、ほおの紅斑(写真3)が認められるケースは10~40%と逆に少ない。その上、口腔粘膜、結膜の異常所見や肝脾腫がない例が多く、診断しづらい。
診断のポイントは血液検査である。本症例では、赤血球数や白血球数、血液像、腎・肝機能の異常はみられず、尿検査の各検査値も正常だったものの、血清補体価(CH50)が低下(10U/mL)していた。抗核抗体は陰性だった。ELISA法による検査を施行したところ、正常値が0.08未満の抗ヒトパルボウイルスB19-IgM抗体とIgG抗体が、それぞれ10.9と24.9に上昇していた。これより、本症例はヒトパルボウイルスB19の初感染と考えられ、伝染性紅斑と診断できた。
鑑別診断は主に臨床症状から行う。麻疹は、高熱のほか、鼻カタル、結膜炎、咽喉頭炎、顔面浮腫、口腔粘膜のコプリック斑を伴う。紅斑は半米粒大から小豆大で、融合傾向を示し、病変は耳後や顔面に初発して、体幹から四肢へと拡大する。風疹の紅斑の場合は、拡大の様式が麻疹と似ているが、個別の皮疹は粟粒大で融合しない。EBウイルスの初感染で起こる伝染性単核球症も同じく症状が多彩で、リンパ節腫脹、白血球とリンパ球の増多、異型リンパ球の出現のほか、口蓋の点状出血やアンギナ、肝脾腫を生じる。皮疹も麻疹様、風疹様、多形滲出性紅斑様などと種々の所見をみせる点が特徴となる。
一方、全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病については、手指の腫脹や関節痛の症状が伝染性紅斑と共通しているため鑑別が難しい。よって、これらの疾患を否定するには、抗核抗体などの自己抗体が陰性である点やレイノー症状がない点を確認するとよい。
伝染性紅斑の治療としては、基本的には1週間ほどの安静を勧めればよい。関節痛が強い場合に限り、対症療法として非ステロイド性抗炎症薬を処方する。本症例の場合、初診の約5日後には症状が消失していた。
ただし、妊婦への感染は、胎児水腫の原因になり得るため注意しなければならない。ウイルスには赤芽球系で増殖する性質があり、胎児の赤芽球系で増えると胎児に貧血が起こるためである。
自己免疫性溶血性貧血などの溶血性疾患の患者でも、急速な貧血の進行により骨髄無形成発症が起こり得るので気を付けたい。
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