伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19(HPV-B19)による発疹症で、幼児や学童に好発する「リンゴ病」として有名だが、最近成人の発症例が増えていることは重要である。特に、小児との接触の機会が多い20歳代後半から30歳代の女性に多く、医療従事者での発症も報告されている。
ヒトパルボウイルスB19による感染症は通常、感染の約1週間後に感冒に似た症状が現れ、さらにその1週間後に皮疹が出始める。経気道感染がほとんどで、ウイルスは感染初期の約2週間にだけ、主に血液と唾液に排泄され、皮疹の出る時期には排泄されない。
成人では、小児に比べて全身症状が強い。発熱、全身倦怠感、関節痛、手足の腫れ(写真2)が60~90%で起こり、表在リンパ節腫脹が約30%に生じる。小児では両ほおの平手打ち様の紅斑と四肢の網目状紅斑が一般的であるが、成人では網目状紅斑のほかにも風疹様紅斑や紫斑が見られることがあり、ほおの紅斑(写真3)が認められるケースは10~40%と逆に少ない。その上、口腔粘膜、結膜の異常所見や肝脾腫がない例が多く、診断しづらい。
診断のポイントは血液検査である。本症例では、赤血球数や白血球数、血液像、腎・肝機能の異常はみられず、尿検査の各検査値も正常だったものの、血清補体価(CH50)が低下(10U/mL)していた。抗核抗体は陰性だった。ELISA法による検査を施行したところ、正常値が0.08未満の抗ヒトパルボウイルスB19-IgM抗体とIgG抗体が、それぞれ10.9と24.9に上昇していた。これより、本症例はヒトパルボウイルスB19の初感染と考えられ、伝染性紅斑と診断できた。
鑑別診断は主に臨床症状から行う。麻疹は、高熱のほか、鼻カタル、結膜炎、咽喉頭炎、顔面浮腫、口腔粘膜のコプリック斑を伴う。紅斑は半米粒大から小豆大で、融合傾向を示し、病変は耳後や顔面に初発して、体幹から四肢へと拡大する。風疹の紅斑の場合は、拡大の様式が麻疹と似ているが、個別の皮疹は粟粒大で融合しない。EBウイルスの初感染で起こる伝染性単核球症も同じく症状が多彩で、リンパ節腫脹、白血球とリンパ球の増多、異型リンパ球の出現のほか、口蓋の点状出血やアンギナ、肝脾腫を生じる。皮疹も麻疹様、風疹様、多形滲出性紅斑様などと種々の所見をみせる点が特徴となる。
一方、全身性エリテマトーデスや混合性結合組織病については、手指の腫脹や関節痛の症状が伝染性紅斑と共通しているため鑑別が難しい。よって、これらの疾患を否定するには、抗核抗体などの自己抗体が陰性である点やレイノー症状がない点を確認するとよい。
伝染性紅斑の治療としては、基本的には1週間ほどの安静を勧めればよい。関節痛が強い場合に限り、対症療法として非ステロイド性抗炎症薬を処方する。本症例の場合、初診の約5日後には症状が消失していた。
ただし、妊婦への感染は、胎児水腫の原因になり得るため注意しなければならない。ウイルスには赤芽球系で増殖する性質があり、胎児の赤芽球系で増えると胎児に貧血が起こるためである。
自己免疫性溶血性貧血などの溶血性疾患の患者でも、急速な貧血の進行により骨髄無形成発症が起こり得るので気を付けたい。

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